~ Traditional Karate blog~

田舎での暮らしや思いを書いている老いぼれです。 また、H・李小龍北海道倶楽部・Kと日本IUMAに所属しマニアックなことや技術的鍛錬で人生を楽しむ日々です。 芦原空手(四国修行時代)や日々修行の溜め込んだ秘蔵映像を発信していきます。

気分悪いな・・・じゃご苦労さん



松山修行時代の話です。
ある秋の夕方、道場に向かっていると丁度、芦原英幸館長はいつもの会館横通路をフラッと歩き、出掛ける様子でした。
すれ違うときに「押忍」「オス、ご苦労さん・・・練習に来たん?今日は練習しなくていいけん、アシハラに付きあわんけん。」と誘われ、空手衣バックを更衣室に置いて一緒にタクシーに乗り込みました。
しばらく走り、松山の繁華街 高級クラブで総革ソファに腰掛けました。
あまりのヨレヨレシャツとジャージパンツに運動靴は大変な場違いでした。
「しかしお前な、もうちょっとましな格好で来ればよかったな、ヒゲも剃らんと・・・」と芦原館長は、仰いましたがましな服は一切持ってませんでした。

着物羽織った上品なママさん等と空手談義や出版した本ビデオのエピソード、武器術のオリンピック競技化、世界情勢の話題が始まりました。1週間前、松山で極真空手全四国大会が開催され私は練習仲間と見ていたのです。その大会話題で盛り上がりました。
当日、大山倍達総裁は海外遠征で来られず、郷田勇三さん、蘆山初雄さん、長谷川一幸さん、西田幸夫さん、松島良一さん、三好一男さん、中村誠さん等の各支部長面々が来られました。高見支部長の氷柱試割り演舞や試合模様を説明するうちに芦原館長はにこやかに時折、遠くを見るように極真時代の懐かしいエピソードを話し始めました。「懐かしいな、みんなアシハラの後追いかけ、教えて下さいと真似したんよ」
大会で長谷川一幸さんのお弟子さんと思われる選手が、受け崩しがずば抜けて上手く、準決勝まで登った記憶があり、館長に話すと「一幸なんかようテクニック盗みに来たけん、そんな 時代だったけん。」

気持ちよく飲んでいるとカウンター隅に陣取った松方弘樹さん似の日焼けた紳士がチラチラ此方を見ながらヒソヒソ船の話が聞こえました。
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突然、芦原館長の笑顔が消え、その紳士に「其処の黒いの誰か知らんがアシハラの船に噂発てちょると黙っていないけん。表出ろ!」
紳士は「俺はあんたの噂したことないが」と言い放ちました。

芦原館長は私の目を見ながら「あいつは前からアシハラの悪口言いふらしちょる男なんよ、今日はぎゃふんと言わしちゃるけん。」

次の瞬間、至近距離まで入り「お前なんだよ・・」機関銃の如く捲し立て始まった声は止みません・・・店内は一斉に静まり、紳士は立ち上がりドアの外へ走り出しました。
先に出た黒い紳士を追うように店を出るともう誰も居ません。
後ろに続いたママさんと私は胸を撫で下ろしましたが逃げ足の素早い紳士でした。
一週間前の日曜、船で釣り楽しむ芦原先生は近くを轟音で走る女性達を乗せたプレジャーボートに邪魔され、その日焼けた黒い紳士の顔を覚えていたそうです。

「気分悪いな、呑み直すけん・・・じゃ、ご苦労さん・・オス」と館長の後ろ姿を見るとズボンの位置で掌を軽く振っていました。

気分損ねた館長は、次の繁華街へ消えてしまいました。
私は所持金も無
何とかかんとか夜の繁華街を1時間掛けて徒歩で帰りました。

鍛練は続く・・・